[cinema] 『見はらし世代』
主人公の青年の姉、結婚に悩み、家族のありようについて悶々とする女性演じる木竜麻生さんをお目当てに見に行きましたが、遠藤憲一さんの感情を押し殺した演技と、そして物語の終盤に感情が溢れだした演技が凄い、井川遥さんも菊池亜希子さんも一つ一つのセリフに込めた表情が凄い、主演の黒崎煌代さんも寡黙な青年を演じているのに表情や振る舞いで怒りも諦めも達観も全て表していて凄いと感じた映画でした。
映画の感想は「家族ってメンドクサイ、人間ってメンドクサイ。でも愛おしい」という凡庸な感想ですが、それに尽きます。
[cinema] 『ホウセンカ』
無期懲役の受刑者として人生の最後を刑務所の独房で迎えようとしているヤクザが過去を走馬灯のように振り返る物語です。声の出演に小林薫さん、戸塚純貴さん、満島ひかりさん、宮崎美子さん、ピエール瀧さんと錚々たる俳優陣が並んでいるアニメーション作品だったので雨の日曜日になんとなく映画館に足を運んでしまいましたが、アニメーションの優しい絵柄に反して、地価狂乱に乗じて手に入れた泡銭を歓楽街で溶かす若き日の主人公のヤクザの姿、そしてバブル崩壊とともに沸き起こるヤクザの身内同志の覇権争いに巻き込まれていく主人公の有り様を見ていると、日曜日にこんな作品を見るんじゃなかったと途中で後悔しました。しかし映画の終盤に訪れる予想外の展開。大人のおとぎ話かもしれませんが、全てを投げ捨て、全てを失い、最後に残されたしあわせに心救われた物語でした。
[cinema] 『おーい、応為』
画狂 葛飾北斎の娘で弟子でもある葛飾応為(お栄)を主人公にした映画をみてきました。NHKドラマで宮﨑あおいさんが演じた応為は達観したやさぐれ感、アンニュイな佇まいが素敵でしたが、長澤まさみさんが演じる応為は気迫に満ちた凄みがありました。刀を抜いた武士が丸腰で立ち塞がる応為に気圧される場面は圧巻でした。北斎は90歳で亡くなるまでに93回引っ越したと伝わっているそうですが、映画の中ではお栄さんが拾ってきた子犬が引っ越しのたびに大きくなる姿で時の流れを表現する演出が巧みでした。何事かに対して狂ったように熱中したことはないし、そこまで入れ込みたくはない、という冷めた気持ちが私の中にはどこかあるのですが、「これが人生の全て!」という人のおこぼれをちょっぴり疑似体験しました。
[cinema] 『秒速5センチメートル』
新海誠監督の2007年公開のアニメーション映画作品の実写化版をみてきました。叙情的、暗喩的な新海誠監督作品に対して、説明過多、セリフ多めに感じましたが独立した作品として楽しみました。アニメ版の『コスモナウト(種子島編)』の登場人物の姉妹を宮﨑あおいさんと森七菜さんが演じているのですが、この二人はオリジナルアニメを越える当たり役でした。特に宮﨑あおいさんが演じる姉の、どこか達観したような、しかし、妹や教え子を見守る感じが押し付けがましくなく、しかし、突き放しているわけでもなく、絶妙な距離感がとても素敵でした。コスモナウトの主題は、故郷(種子島)から旅立った宇宙探査機がひとりぼっちで遠い深宇宙へ長い長い孤独な旅を続けていく姿だと思うのですが、宇宙探査機と深宇宙の描き方が実写ではちょっと難しかったのかな?と見ていて思いました。

