[cinema] 『小さな恋のメロディ』
上田映劇(トラゥム・ライゼ)で『小さな恋のメロディ』を上映していたので見に行ってきました。
まだ学生の頃に、土曜日の午前中の授業が終わって家に帰ったらテレビで放送していたのでタイトルも知らないまま途中から見たのですが、劇場で最初から最後までしっかりとみると、また違った感想も湧いてきました。「高圧的な学校の教師たち」とか「息子の友人の家庭環境を値踏みする体裁ばかりの母親」とか「昼間からパブに入り浸りの保釈中の父親」とか大人たちの浮世の汚れ具合がわかる年齢に私もなりました。
映画のラストシーンで、手押しトロッコで恋の逃避行へと旅立っていく幼い二人を高い視点から俯瞰していくカメラ。ドローンを使った撮影を見慣れた今となっては凡庸な場面にも思えましたが、誰もあんな映像を見たことがない時代に、それを思いついて映画として実現した当時の映画制作者に改めてすごいなと感動しました。
[trekking] レンゲツツジの湯の丸高原2021
カレンダーの関係で仕事が休みとなったため、朝から燃えないゴミを出したり、銀行に出かけて自動車税の還付を受けたりと用事を済ませてから、のんびりと近くの湯の丸高原にレンゲツツジを見に散策してきました。
[cinema] 『約束の宇宙」
小学生を娘を持つ女性宇宙飛行士サラの物語。ドキュメンタリー映画ではありませんが、欧州宇宙機関(ESA)の全面協力ということで過酷な訓練やロシアのスターシティ、そしてバイコヌールのロケット発射場の風景がリアルで迫力がありました。
娘のステラの父親は同じ職場で働く宇宙物理学者だけれども離婚済。そしてもう一人の主役であるステラは引っ込み思案で友達がなかなかできないけれど、家庭の中では口数が多くて母親への反抗期の真っ只中。マット・ディロンが演じる、ちょっとマッチョな宇宙船クルーのリーダーが何かと主人公のサラにケチをつけてくるのですが、物語の終盤には彼が抱えているトラウマも明かされてチーム・クルーとして仲間になっていきます。映画のエンドロールで実際に宇宙にいった女性宇宙飛行士たちの写真が次々にスクリーンに映し出されて感動を誘いました。
巨大な敵が来襲するわけでも、未曾有の危機が襲ってくるわけでもありませんが、関係者一人一人が様々な犠牲を払いながら宇宙開発の夢を実現していく姿に胸を打たれました。
[cinema] 『Arc』
中国系アメリカ人作家の短編SF小説の映画化作品です。
派手なCGやVFXはありませんが、不老不死という古典的な題材を今の時代に突き刺さるテーマとして見事に描き出していました。物語の後半のモノクロームのパートでは、SF作品であるにもかかわらず小津安二郎の映画を見ているような不思議な感覚に襲われました。派手な映像がない部分を俳優さんの演技で見せているところが巧みで、前半は寺島しのぶさんが演じる孤高のアルチザンが物語の世界観を描き出し、物語の後半は小林薫さんと風吹ジュンさんが演じる老夫婦が物語の描く世界の行き着く先を見せてくれる演出が素敵でした。そして主人公のリナを演じる芳根京子さん。30歳の肉体のままで、19歳から132歳までの役柄を立ち振る舞いで演じ分けたところに感嘆しました。触れるもの全てを傷つけてしまう勢いを持った10代。社会の中に居場所を見つけて充実を覚える30代。さまざまな目標を達成し達観の境地に到った100歳。セリフや表情からこれらの変化を演じ分けた姿は圧巻でした。