[cinema] 『BAUS 映画から船出した映画館』
2014年に惜しまれつつ閉館した吉祥寺バウスシアター。大正時代に寄席や演劇、歌舞音曲、そして無声映画もかける演芸場、井の頭会館に始まり、世界恐慌、太平洋戦争、高度成長期と吉祥寺の文化を見守り続けてきた映画館を家族の歴史とともに描いた素敵な作品でした。ロケ地として上田映劇が使われていましたが、スクリーンの前に舞台があったり、二階席があったり、という風景が井の頭会館のありし日の姿にピッタリとはまっていました。
[cinema] 『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』
『恋するマドリ』、『私をくいとめて』、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』の大九明子監督。ヒロインは河合優実さんということでGW最終日に上田映劇へ見に行ってきました。
萩原利久さんが演じる大学生と河合優実さんが演じる同級生の一瞬にして意気投合して燃え上がる恋の話かと見ていると、伊東蒼さんが演じる銭湯のバイト仲間が割って入ってきて長台詞から全部持っていってしまうのかと思いきや物語は急展開。最後は再び、河合優実さんが演じる大学生が全部持っていきます。登場人物が何を感じて何を考えているのかひた隠しにする演出でしたが、『今見上げている空』が永遠に続く訳ではない刹那のひとときであることを三人の恋を通じて描いた素敵な作品でした。
[cinema] 『光る川』
「300年前の悲恋の伝説」と「昭和30年代の高度成長期を迎えて経済優先へと姿を変えていく里山に暮らす家族の物語」の2つの物語を行ったり来たりしながら、長良川の美しい風景を描いた作品でした。CGは一切なしとされていますが、フィルムのぼんやりとしたノスタルジックな映像とは異なり、デジタル撮影技術のくっきりと鮮明で色鮮やかな映像美が印象的でした。そして美しい長良川の風景だけでは私は飽きてしまったと思いますが、華村あすかさんが演じる主人公の里の娘をとても美しく撮っていて、最後までスクリーンにくぎ付けになりました。男女のラブストーリーとしてみることもできるし、家族の物語としてみることもできる。個人と社会と自然の関係性とみることもできる。多面的な作品だと思いました。