ちはやふる日記


[cinema] 『光る川』

2025年05月12日 19:59更新

「300年前の悲恋の伝説」と「昭和30年代の高度成長期を迎えて経済優先へと姿を変えていく里山に暮らす家族の物語」の2つの物語を行ったり来たりしながら、長良川の美しい風景を描いた作品でした。CGは一切なしとされていますが、フィルムのぼんやりとしたノスタルジックな映像とは異なり、デジタル撮影技術のくっきりと鮮明で色鮮やかな映像美が印象的でした。そして美しい長良川の風景だけでは私は飽きてしまったと思いますが、華村あすかさんが演じる主人公の里の娘をとても美しく撮っていて、最後までスクリーンにくぎ付けになりました。男女のラブストーリーとしてみることもできるし、家族の物語としてみることもできる。個人と社会と自然の関係性とみることもできる。多面的な作品だと思いました。


BAUS

上演の後に金子雅和監督による舞台挨拶がありましたが、『椀貸伝説』や『木地師』についての民俗学的な背景を興味深く伺いました。物語の中では、出会うはずのない二人が偶然にめぐり逢い、一瞬にして惹かれ合った中で唯一『共同作業』をするのが、椀を作る轆轤(ろくろ)を引く場面でした。撮影では現在も木地師の伝統を受け継いでいる職人さんに指導していただいて役者さんが演技をしたと聞き、リアリティーはそういうところからくるのだと感心しました。もし、あの場面がないと、激情に突き動かされた男女というだけで感情移入はできなかったのかもしれませんが、惹かれ合う若い男女が呼吸を合わせて轆轤を引く場面が全てを象徴する艶めかしささえ漂うカットでした。



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