[cinema] 『本気のしるし』
2020年11月29日 01:40更新
偶然に出会った謎の女性に翻弄されて、日常から逸脱していく姿を描いた転落劇。作品のキャッチコピーにある「共感度0.1%」は正に当を得ていて、森崎ウィンさんが演じる二股の割り切った関係を続けている男性に対しても、土村芳さん演じる無意識に思わせぶりな態度をとって男性に媚を売ってしまう女性に対しても、一ミリも共感は生まれない、というか、気味の悪さばかり感じてしまう冒頭でした。ところが男性を翻弄する謎の女性の友人の証言で彼女に対する印象がガラリと変えられてしまう現代の『羅生門』のような展開。
薬物使用で逮捕された歌手を叩き、不倫報道された俳優を叩き、緊急事態宣言下で県を跨いで移動しているドライバーを叩き、一つ一つは褒められたことではないにせよ、起こっているコトの背景や原因からは目を逸らして、コトの表層だけを非難して「自分は違う」、「自分は大丈夫」と安心している日常にダメを突きつけられてしまう衝撃的な作品でした。