[cinema] 『アルプススタンドのはしの方』
2020年09月22日 05:48更新
高校演劇の戯曲を映画化した会話劇。同じ高校の野球部が甲子園に出場したものだから、見たくもない、と言うか試合を見てもルールも分からない野球部を渋々、アルプススタンドから応援する羽目になった三人の女子高生と元野球部員の男の子の数時間を切り取った物語。会話劇だから登場人物たちはずっとおしゃべりを続けているのだけれども中々本音は出てきません。ペットボトルのお茶の銘柄がどれが良いの悪いのと、靴の上から足を掻くような会話が続きます。しかし物語が進むにつれて、誰にも明かしてこなかった、もしかしたら本人も声に出して初めて気づいた本音がぽろりと零れるシーンに心動かされてしまいました。このコロナ禍で職場や学校や社会全体に蔓延している「しょうがない」を高校生の青春群像と真夏の青空がスキッと吹き飛ばしてくれるソーダ水のような清々しい映画でした。