[cinema] 『悪は存在しない』
2024年05月06日 20:22更新
『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督の最新作をみてきました。
舞台は長野県の架空の街 水挽町。架空の土地ですが撮影は諏訪周辺で行われており馴染みのある八ヶ岳の山並みが背景に映し出されています。「このあたりは観光地ではなく住宅地と別荘地なんですよ」とか「歴史のある土地柄ではなく戦後の満州引揚者による開拓で生まれた集落です」なんて説明がとてもしっくりとくる、いかにもありそうな場所でした。そして、そんなところにコロナ補助金目当てのグランピング施設建設計画がもちあがります。地元説明会に来る企業側の二人は上から言われてきただけのグランピングとは元々畑違いの芸能事務所社員。杜撰な計画を上から言われたままに推し進めようとはしますが、悪と言えるほどの積極性はなく、どちらかと言えば住民寄りの感情に傾いていきます。一方の東京でグランピング建設を進めようとしている社長やコンサルはただただ補助金目当ての損得勘定だけで悪と呼べるほどの意思も能力も持ち合わせていません。
「野生の鹿は人を襲うことはしないが、手負の鹿か、その親ならば違う」というエピソードがエンディングへの伏線となっていくのですが、一気に突き放されるようなラストシーンは衝撃的でした。