[event] 石井食品 ☓ カイゼン・ジャーニー / 食品メーカーでカイゼン・ジャーニーをはじめるまで
IT系開発者コミュニティ "DevLOVE" が開催したIT勉強会『石井食品 ☓ カイゼン・ジャーニー / 食品メーカーでカイゼン・ジャーニーをはじめるまで』に参加してきました。
イベントの会場は千葉県船橋市のJR船橋駅から歩いて10分のところにある石井食品本社の一角に設けられた 即売所 兼 カフェ 兼 食育応援スペース的なコミュニティースペース『ヴィリジアン』。イベントがスタートした土曜日のお昼すぎには小さなお子さんを連れたお母さんたちで賑わっていました。子供を遊ばせながら喫茶スペースでお母さんはゆったりできる地元の憩いの場所なのでしょうね。
最初の発表は、書籍 『カイゼン・ジャーニー』を執筆した市谷聡啓さんのおはなし。次に同書の共同執筆者で老舗のソフトウェア会社ヴァル研究所で開発部門や総務部門の組織の壁を越境してアジャイルやスクラムの文脈で仕事改革を進めている新井剛さんの取り組みを伺いました。
後半は「イシイのお弁当くん! ミートボール」でおなじみの食品会社で一人情シス(ひとりぼっちの情報システム担当者)になった高原さんの体験談談。そして一度は家業を嫌ってIT業界に身を置いたのちに再び祖父が創業した石井食品に戻りアジャイルで組織改革を進めている石井さんの未来に向けた取り組みを楽しく拝聴しました。
翔泳社 / デベロッパーズ・サミットの岩切晃子さんも聴講者にいらして、最後は会場の撤収を仕切っていました。さすが目黒雅叙園で毎年開催される数千人規模のイベントを仕切ってきた方の仕事っぷりということで、これまた違った意味で勉強になりました。
市谷さんのお話は「カイゼン・ジャーニー」を執筆する過程そのものがカイゼン活動だったということ。構想4年、執筆4ヶ月の紆余曲折を経て、締め切りに追われながらも本を書き上げた話は面白かったです。
次の新井さんのおはなしは老舗のソフトウェア会社で組織を越境してカイゼンを進めてきた経験のお話。「駅すぱあと」といえば、わたしもNEC PC98シリーズの時代からお世話になっていました。最近ではYahooの乗換案内を利用するとバックエンドで「駅すぱあと」が動いているのだそうです。会社創業時からのベテランさんから若手のエンジニアまで幅広い160人の社員が働く組織でコミュニケーションを活発にして生産性を上げている話は参考になりました。なにより仕事を楽しく変えていく、という取り組みが素敵ですね。「私は天才ではありません。誰にでもできることを愚直に進めただけです」と謙遜されていましたが、毎年迫ってくるダイヤ改正やバージョンアップの作業をクリアしつつ、仕事の仕組みを変えていくというのは本当に困難なミッションだと思いました。
後半は石井食品で一人情シスを経験した高原さんのお話。転職してきた年商100億円の食品会社で「3ヶ月で販売管理システムのリニューアル」という無茶振りを受けて当初は三人いたIT担当者は高原さん一人ぼっちに。販売管理システムのリニューアル案件は中止されて仕事はなくなってしまったけれども、仕様も記録も残されていない工場のネットワークシステムやサーバーシステムのお守りとリプレイスを成し遂げた経験談は涙無くしては聞けない内容でした…
高原さんの周囲には、ITについて相談できる同僚も許可を求める上司もいなかったのだけれど、製造現場の若い社員さんから定年を過ぎたベテラン社員さんまで気さくに話して、孤立無援だった食品会社の中で協力者を作っていったお話にはとても勇気をいただきました。
石井食品 取締役執行役員 石井智康さんのお話は、高原さんとは対照的と言っては失礼ですが、これまた波乱万丈のストーリー。家業の食品会社を嫌いIT業界に身をおき「流しのスクラムマスター」。スペイン放浪の旅から、とある事情で石井食品に戻り、スクラムやアジャイルの経験を生かして、従業員300名の佃煮製造から始まった老舗食品会社の業務改革を進めているお話も大変に興味深いものでした。おじいさんが創業した会社に入れば、さぞやチヤホヤされるのだろうと羨ましくも思いましたが、家族経営のアットホームな会社の中で家族関係のプライベートも全て筒抜けの職場で仕事を進めるのも大変なんだろうなと奇妙な同情が湧いてしまいました。
四人の発表後はインスタ映えする石井食品のミートボールをアレンジしたオードブルを提供いただきました。
石井食品が千葉県発の会社であることも、変わらない味だと思っていたミートボールが、日々、調理法や材料の改善を繰り返していることも、今まで知りませんでしたが、石井食品愛溢れるお二人からの話を聞いて、すっかりファンになって帰りました。 ^_^;