押井守監督で映画化された「スカイ・クロラ」シリーズの原作者が工作に対する考え方を綴ったエッセイです。著者が大学の先生をしていた経験から語られる研究や教育に対する考え方、手仕事の効用から、設計や数値化の功罪、昨今のブログブームへの苦言に至るまで、「工作者」の視点から四方八方に広がる話題が、いちいち腑に落ちるところがありました。
「ばらつき」について言及した部分はETロボコンと通じる部分がとても多いなと思いました。計算通り、設計通りには上手く運ばない。だから悲観的な予想の上にあれこれ試行錯誤してみるべきだ、という意見には大いに共感できます。
そして、なにより著者の工作が好きで好きでたまらない気持ちが伝わってくる本です。
僕は、それを「工作の神様」と呼ぶしかない、と考えるに至った。子供のときに、そう結論したのである。工作の神様が褒めてくれるだろう、という気持ちとともに、きっと微笑んでくれるだろう、つまり、神様に喜んでもらえる、とイメージした。
— 「創るセンス 工作の思考」 第5章 創作のセンスが生み出す価値